エッセイ
エッセイ : 「日傘」
「日傘」 大木晴子
今年の暑い夏は、初めて日傘をさしてみたいと思いました。
時折、傘屋さんをのぞいて見たりしましたがなかなか気に入った物に出会えずそのまま秋をむかえました。
幾つも台風が過ぎ去った頃に義父が学校時代の仲間と連れ合いの運転する車で出かけました。そのうちのお一人から「これはあなたの奥さんが使われると良いですよ」と夫に義母の方見分けの日傘が手渡されました。義父の話だと義母がとっても気に入って糸を染めて織ってもらった布で拵えてもらった「日傘」だと言う話でした。その日傘は、紬のような織りによく見ると幾つもの色がさりげなく混じり、シマがモダンな感じがして少しも古く感じません。
十五年前に亡くなった義母の方見分けは、義父と義妹がしました。
私は一つだけ義母の方見分けには、望みがありましたがそれはかないませんでした。
義母は洋裁が上手でした。仮縫いの時の縫い目までが凄く丁寧でいつもビックリしていました。ですからくるいの無いそれは着やすい服に仕立て上がるのです。近所に住む義母の友人はきっと彼女の拵えた服なら大切に着てくださるだろう。だから皆さんに一着ずつ差し上げて「季節ごとに街で義母が作った服を着た方に出会える」素敵だろうなぁーと思いました。母がそこに活きていると感じられると嬉しいと思いました。
そんな思いがやっと薄れてきた頃に義母の「日傘」が私のもとに戻ってきました。
傘を開き肩に触れると「晴子さん、使ってね」そう母の声が・・・・。
もう探さなくていいなぁー 日傘を。(おおきせいこ)
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