ジローの話
ジローの話 : 「虐待」(ジローとゆきの話その1)
「虐待」(ジローとゆきの話その1) 大木晴子
一ヶ月前、我が家に来たゆきと散歩をしていると子どもの声に
表情をかえるゆきに私は気づきました。
ゆきの前の生活がどんなであったか詳しくは聞いていませんでした。
ただ虐待されていて保護された犬とだけ・・・。
ゆきと一緒に届けられた「血統証」も、処分していただくように
ドックシェルターの方に頼みました。
また、数日が経ち何も言わないゆきに不安な気持に・・。
ジローに「遊ぼう!!」と声をかけたいゆきが
発した声に更に不安が増して・・・・・。
もしかして、この子・・・・声帯を・・・・・。
そんな気持ちが心から離れない毎日でした。
「ジローくん、お芋、食べる!!」
ジローは、元気にわん、わん、わん。
「ゆきちゃん、お芋、食べる!!」
ゆきも声をだしたいけどでない様子が続きました。
ある日、連れ合いが・・・・
「ゆきも食べるか!」とジローの元気な声の後に言うと
小さな声でわんに近い発音でなきました。
「大丈夫だわ、ゆき!」
「ゆき、良かったね。なきかたを忘れていただけだわ!!」
この時に、私はどんな虐待をされていたか
詳しく聞きに行こうと思いました。
保護されたペットショップでお話を伺うと
心配していた通り、その家の子どもも親と一緒に
蹴る殴るのいじめをゆきにしていたようです。
酷い時は、夜家に入れなかったことも。
小さなこの犬は暗い闇夜の中ひとりで
何を考えていたのでしょう。
新しく飼われた洋犬の子犬と遊ぶ家族を見ながら、
賑やかな家の中の様子を、どんな思いで見ていたのでしょう。
寂しかったでしょう。
私は思いました。
ゆきは、はじめはたくさん泣いたでしょう。
「わたしも家に入れて!!」・・・・と。
きっと、その声を止める為に首に鳴くと電気を送る
機械を付けられていたのではないでしょうか。
我が家に来てからのゆきを見ていてそう思えるのです。
ゆきが持っている素敵な声を出せるまでには・・・
ゆきがジローと同じように子どもたちと仲良くできるまでには・・・
少し時間がかかるかもしれません。
ゆきが発する声をひとつ、ひとつ大切に家族で
聞いて、褒めて、喜んであげようとおもいます。
「ゆき!楽しくがんばれ!!」
(06-07-18・おおきせいこ)
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