反戦・平和
反戦・平和 : 俳句余想「梅が丘通信」冬の月号 村雲 司
「ラオスの古都、早朝5時過ぎのルアンパバーン、托鉢の僧侶」 撮影O・Shigeru
雲さんこと村雲 司さんから何時も送っていただいている
「梅が丘通信」の冬の月号(2008年12月12日)を許可を得てここに
掲載させて頂きます。今日もニュースに小泉毅容疑者の名が出ていました。
来年3月まで精神鑑定をすることに・・・。
(08-12-22・おおきせいこ)
俳句余想「梅が丘通信」冬の月号(2008年12月12日) 村雲 司
木枯しの二番も吹いて街縮む
山口県柳井市は、元厚生次官宅連続襲撃事件の小泉毅容疑者の故郷である。彼が出頭した時に私が読んでいた本に、丁度その地のことが載っていた。その本は 藤原新也の「日本浄土」 である。「海と山に庇護されたかたちのこの土地は清澄で温暖な気候に恵まれ、ある種桃源郷の趣を呈する」と著者はこの町を表現している。
北風に削り込まれて糸の月
「浄土」という本の題名や「桃源郷の趣」という言葉と容疑者との皮肉な対比が、土塊を飲み込んだように違和感を残したままである。勿論風土によって人間の全てが形成される訳ではないが…。風土さえもが最早そこに育つ若者の目には映らず、画一化された目標にだけ心を注ぎ、競争に敗れたと思い込んだ時破滅的な行動に走ってしまったのか。
書かぬこと書けぬことあり冬手紙
彼は出頭の前日、柳井に住む父親に手紙を出したという。何を書いたのだろうか。何を書けなかったのだろうか。私も嘗て何度か生前の父母に手紙を書いた。が、その時本当に書きたいことは何時も書ききれなかったように思う。書けぬこと言えぬことの闇の中に何時も真実がある。
菊畑の合唱うねる月の道
夕闇の中にそこだけ灯が点ったように賑わっていた菊畑が、翌日の夕暮れには全て刈り取られていた。昨夕のあの合唱は覚悟の歌声だったのかと背筋に感じとりながら歩き過ぎる。
藤原新也には「東京漂流」という作品がある。一九八〇年頃の事件現場を写真と文章で巡ったものだ。中の一つに、その時代を象徴するような金属バット殺人事件がある。二浪の受験生が東大卒の父を、そして母までも殴打して殺害した事件である。浪人生は一九六〇年生まれ、小泉容疑者は一九六二年と言うから二歳違い。ほとんど同時期に青春時代を過ごしている。あの頃からの家族の崩壊が現代の多くの事件の土壌となっているのではないか。
寒雷は不況の町へ喝の声
事件の一報を耳にした時、「とうとう」と感じた人が多いらしい。心の隅で快哉をさえ叫ぶ自分がいることに複雑な思いを抱いたようだ。官僚は怠慢や失策によって事故を起こしても、その責任を問われることはまず無い。被害が顕在化した頃には移動や退官をしており、何時もうやむやになってしまう。厚労省は国民年金で決定的な失策を犯した。民間の保険会社であったとしたら、当然会社は破綻している。しかし、破綻どころか今冬も高額のボーナスを受け取って、彼等は恬として恥じることがない。こうした無責任体系が今度の事件の意識下の動機付けとなっているように思う。
金星と今年を語る寒の月
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