人間らしさを手放すな(アメリカ陸軍家族のウェブサイト)から
投稿日時 2004-03-26 19:58:04 | カテゴリ: 反戦・平和
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明日も晴れのリンク集に、アメリカ陸軍家族のウェブサイトを掲載しました。 アメリカのベトナム戦争で闘った退役軍人からイラク駐留兵士宛の手紙です。長文ですがぜひお読みください。 そのサイトの記事の日本語訳をここに掲載いたします。 転載・転送・大歓迎■だそうですのでご自由にお使いください。 (おおきせいこ)
《一退役軍人によるベトナム戦争従軍回顧・懺悔録》 【人間らしさを手放すな】 アメリカのベトナム戦争で闘った退役軍人からイラク駐留兵士宛の手紙です。
兵士たちよ、人間らしさを手放すな ・・・・・・・・・・・・・・・・・ スタン・ゴフ 11月15日 親愛なるイラク駐留の兵士たちへ わたしは退役軍人だ。わたしの息子は空挺部隊員として、諸君とともにイラクに駐留している。 諸君一人ひとりが、イラクでさまざまな変化を経験していることが、わたしにはよくわかる。だからこの手紙では、兵士仲間のことばで、率直に意見を述べよう。
1970年、わたしは空挺部隊員としてベトナム戦争に派遣された。戦争に行く前までのわたしは、まわりから、でたらめな思想を植え付けられていた。テレビや映画からは、「男の中の男として生きるには何をなすべきか」を教わったし、ベトナムに一度も行ったことのない近所の人々からは、「ベトナムが共産化しないよう、米軍が戦わなくてはいけない」と教え込まれた。
われわれ米兵の使命は、「悪いベトナム人から、良いベトナム人を救う」ことであり、「悪いベトナム人が、カリフォルニア沿岸に攻め込まないよう」に彼らを叩きのめすことだった。 そのためにわれわれは駐留し続け、5万8000人の仲間が殺され、300万人のベトナム人を殺してしまった。
イラクの大量破壊兵器が米国を脅しているという話を最初に聞いたとき、「そんなことはありえない、湾岸戦争でさんざんに痛めつけられた後、12年間も経済制裁を受けているイラクが脅威だなんて、いったいどこの誰が信じるものか」と、あきれたものだ。 しかし30数年前、ベトナムがアメリカの脅威になっていると、自分も含めて、 ほとんどの米国民が信じ込んでいたのを思い出した。
大量破壊兵器のウソをでっちあげた政治家たちは、諸君が「偉大な解放者」として、イラクの民衆に歓迎されるだろうとウソをついた。政治家はベトナム戦争でも同じようなことを言ったものだ。ベトナムに民主主義を根付かせるのが、われわれ米兵の役目だとね。
わたしがベトナムに到着する前に、米軍はすでに村々を焼き、家畜を殺し、 畑や森に毒をまき、市民をスポーツ射撃の的とし、村人をレイプして虐殺していた。
ベトナム人被害者たちにとっては、現地に到着したばかりの自分と、すでに蛮行をふるっていた残虐な米兵たちとの見分けがつかない。政治家たちは、そんなことを何も言ってくれなかったから、現地でわたしは、たいへんな目にあった。
政治家たちが諸君に知らせなかったことが他にもある。 1991年から2003年の間に、150万人のイラク人が、栄養失調や医療不 備のせいで死んだことも、??話里蕕気譴討い覆?辰拭?修涼罎任癲△?紊ね 児の死者数は、50万人にものぼった。
いまイラクに駐留しているわたしの息子には、生後11ヶ月の赤ちゃんがいる。 とてもかわいい赤ちゃんで、わたしは孫の顔を見るのが楽しみだ。
同じように、諸君にも息子や娘がいるだろう。自分の子供を何よりも愛すること については、諸君もイラク人も変わりがないことに気がついただろうか? 自分たちの息子や娘を亡くしたイラク人たちは、50万人の幼児が死んだ原因が、 アメリカ政府にあるということを、かんたんには忘れないだろう。
だから、諸君がイラクで歓迎されるだろうというのは、あからさまなウソだった。 それは米国民に戦争を支持させるためのウソだったし、諸君の戦闘意欲を高めるためのウソだったんだ。
もし自分がイラク人の立場だったら、と考えたことがあるかな? 自分たちの町 が米軍に占領されたとしたら、米兵を歓迎する気にはなれないだろう。
われわれはベトナムでも、厳しい現実に直面していた。わたしは、もし自分がベトナム人だったら、「絶対にベトコンになって、米軍と戦っただろう」ということに気がついていた。
ベトナムでもイラクでも、自分たちの家族を無惨に殺され、財産を破壊され威信を傷つけられた人々が、侵略者を追い出そうとするのは当たり前だ。
米兵は、生きのびるために、自分たちに立ち向かってくる連中を殺さなくてはならない。こんな状況を作りだしたのは、ワシントンにいながら、高級ワインとキャビアを楽しんでいる、5千ドルの背広を着た政治家たちなのだ。
でも、われわれは、ワシントンにいる愛想のいい石油成金たちを、どうして止めたらいいのかまだわからないでいる。ということは、諸君は当分の間は、イラクに立ち往生するというわけだ。 わたしの経験からいうと、自分がベトナムで生きのびようと思ったら、残酷にふるまうしかないと考えるようになった。気が狂ったように家々に火をつけベトナム人に向かって見境なしに銃をぶっ放せばいいんだとね。「怒り」が役に立つと思った。信用できないヤツらをみんな憎んで、怒りをぶちまければ、内側にある恐怖心を覆い隠せると考えたんだ。 また、心の中にある罪悪感をなだめるために、やつらは人間なんかじゃないと思いこみ、彼らをグークス(ベトナム人に対する蔑称)と呼んだ。ちょうど諸君がイラク人たちを「ボロ切れ頭」とか、ハージ(イラク人に対する蔑称)と呼んでいるようにね。
昔のアメリカ白人が、黒人をリンチにかける前に、ニガー(黒んぼ)と呼んだのと同じことだ。 彼らを蔑称で呼ぶことで、人間性を剥奪したわけだ。 敵の「人間性」さえ剥奪すれば、泣いてるイラク人の赤ちゃんにだって、銃を向けることができる。でもそれは、自分の人間らしさを殺すことでもあり、そのことに気がついたときには、もう遅すぎるのだ。 自分の人間らしさを失って戦場で生きのびても、母国に帰ってからがまた苦しい。人間らしく生きられないのだ。 わたしの戦友たちは酒やドラッグにおぼれたり、精神病院に閉じこめられたりしている。また、自殺したり、家族や他人を傷つけたりする者もいる。 わたし自身、いまでも毎日を憤怒の中で生きている。他人にはそう見えなくても、怒りの発作は毎日わたしを襲っているのだ。 だからわたしは、諸君に言いたい。
諸君は生きのびるために、やるべきことはやる。しかし、どうか人間らしさを手放さないでほしい。他の粗野な兵士のように、男らしくなくてもいい。怒りと興奮にまかせて、めちゃくちゃな蛮行はしないでほしい。 ブッシュやチェイニーの強欲のために、諸君の人間らしさを犠牲にしないでほし いのだ。 米国の大富豪たちは、世界中のエネルギー資源を独り占めにして、世界の商売がたきをとっちめようとしている。それがこのイラク戦争の本当の意味だ。 メディアは諸君がヒーローだと持ちあげるけど、政治家は諸君を、銃を持った消 耗品として利用したいだけなのだ。
政治家たちは、諸君が吸い込む劣化ウラン弾に汚染された空気や、諸君の身心の痛みや、夜ごとうなされる悪夢のことなど、気にしてはいない。 政治家は諸君の福利厚生予算を減らし、原因不明の病気の存在を否定し、負傷兵や戦死者の姿をメディアから隠している。彼らこそ諸君の敵であり、平和の敵なのだ。 腹黒い大富豪や政治家は、泥棒と同じだ。彼らは「イラクから絶対に逃げ出さない」と息巻いているが、彼らはイラクにいるわけでもないので、逃げ出す必要もないではないか。 彼らは諸君から搾れるだけのものを搾り取って、利用価値がなくなれば、使い古したコンドームのように捨てるだけだ。だから、もし諸君の怒りが、それを発散させる相手を必要としているのなら、それを罪のないイラク人に向けないで、そういう状況を生みだした政治家たちに向けるといい。 わたしは諸君に、「命令に従うな」とは言えない。もしわたしがそう言えばたぶんそれは、違法行為になるだろう。 しかし、法に違反した命令に従わないという行為は、完璧に合法だ。そして「イラク市民を攻撃せよ」との命令は、違法なのだ。 諸君は、どんな状況にあろうとも、イラク人を憎む義務はない。また、どんな状況にあろうとも、自分の人間らしさを手放して荒れ狂う義務もないんだ。
どうか、五体無事で帰ってきてほしい。 どうか、正気のまま、帰ってきてほしい。 あなたを心から愛している人々が、ここで待っているのだから。
そしてあなたが帰ってきたとき、愛する人の顔を真正面から見られる人間であってほしい。 どうか、あなたの魂を、砂漠の砂の中に捨てないでおくれ。 どうか、人間らしさを手放さないでおくれ。
(翻訳・パンタ笛吹/TUPチーム)
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