岩下 結 （出版社・編集者）さん

三上 智恵監督の新作「沖縄スパイ戦史」試写で見てきました。

試写のあと「どうでした？」と監督に訊かれると、いつも答えに窮してしまう。

「よかったです！」「いい映画ですね」なんて軽く言える内容ではない。
「苦しいです」「つらいです」というのが正直な気持ち。過去三作に比しても一層、今回はそれが強い。

でも、それを百も承知で、伝えなければ、記録にとどめなければ、という監督の執念もまた痛いほど伝わってくる。

沖縄という小さな島で起きたひとつの戦争だけでも、こんなにも無数の地獄が、これでもかと出てくる。
体験者でさえ、できるなら忘れてしまいたいと願うその事実を二人の監督は掘り起こし記録する。

この映画に唯一救いがあるとしたら、監督たちのその決意であり、史実を直視すれば人は愚行を繰り返さないはずだという、祈りに似た希望なのだ。

その希望を受け取るのか、見なかったことにするのか。観客もまた傍観者ではいられなくなる。そういう映画。

18-05-31（おおき せいこ）
大木晴子
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